収益物件を買うとき、「個人名義で買うか、法人を作って買うか」は最初に決めておきたい論点です。後から変えるには、税金と手続きの両面で大きなコストがかかるためです。
この記事では、岡山で収益物件を検討している方に向けて、判断の分かれ目を整理します。
最大の違いは税率
判断の中心になるのがここです。
個人は累進課税
個人の不動産所得は、給与所得などと合算して総合課税されます。所得税は課税所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、住民税10%と合わせると最大で約55%になります。
つまり、給与所得が高い方ほど、追加の家賃収入に対する税負担が重くなります。
法人はほぼ一定
法人税は、中小法人であれば所得800万円以下の部分に軽減税率が適用され、それを超える部分は一定の税率です。法人住民税・事業税を含めた実効税率は、おおむね25〜35%程度に収まります。
分岐点はどこか
一般には課税所得900万円前後が一つの目安とされます。ここを超えると個人の限界税率が法人の実効税率を上回るためです。
ただしこれは税率だけを見た場合の話です。社会保険料、法人の設立・維持費、税理士報酬を含めると、実際の分岐点はもう少し上になることもあります。
経費と損失の扱いが違う
法人のほうが経費の幅が広い
法人では、次のようなものを経費にできる余地があります。
- 役員報酬(家族を役員にして所得を分散できる)
- 役員社宅(一定の要件を満たす場合)
- 生命保険料(契約形態による)
- 退職金(将来の支給に備えた準備)
特に家族への役員報酬による所得分散は、法人を使う大きな理由の一つです。ただし、実態のない報酬は否認されるため、実際に業務に関与している必要があります。
赤字の繰越期間
- 個人:青色申告で3年間繰り越せる
- 法人:10年間繰り越せる
大規模修繕などで大きな赤字が出た年の損失を、長く使えるのは法人です。
個人には損益通算がある
一方、個人の強みもあります。不動産所得が赤字になった場合、給与所得と相殺できます(土地取得のための借入利子など一部制限あり)。
減価償却で帳簿上の赤字を作り、給与所得の税負担を下げるという手法は個人ならではです。法人では給与所得と通算できません。
売却時の税率が大きく違う
見落とされやすいポイントです。
個人の譲渡所得は分離課税
- 短期譲渡(所有5年以下):約39%
- 長期譲渡(所有5年超):約20%
長期保有後に売却する場合、個人の約20%は法人の実効税率より低くなります。売却益を大きく見込む場合、個人が有利になることがあります。
法人は他の所得と通算できる
一方、法人では売却益も事業所得と合算されるため、他の物件の赤字や修繕費と相殺できます。複数物件を持ち、売買を繰り返す場合は法人が扱いやすくなります。
融資はどうか
1棟目は個人のほうが通りやすいことが多い
設立したばかりの法人には決算実績がありません。そのため金融機関は代表者個人の属性(年収・勤務先・自己資金)を見て判断し、代表者の連帯保証を求めます。
実質的に個人で借りるのと変わらないため、1棟目では個人のほうが手続きが簡単ということになります。
規模を拡大するなら法人
個人の場合、年収に対する借入総額に上限があり、2棟目・3棟目で頭打ちになります。法人であれば、決算書の内容次第で融資枠を伸ばせる可能性があります。
最終的に何棟まで増やしたいかが、名義の判断に直結します。
コストと手間
設立費用
- 合同会社:登録免許税6万円を含め、10万円程度
- 株式会社:定款認証と登録免許税を含め、25万円程度
不動産保有を目的とする資産管理法人では、費用の安い合同会社を選ぶ方が多くいます。
維持費用
- 法人住民税の均等割:赤字でも年間7万円程度
- 税理士報酬:顧問契約と決算で年間20〜50万円程度
- 社会保険への加入義務(役員報酬を出す場合)
年間で30〜60万円程度の固定費が増えると見ておいてください。この額を上回る節税効果が出るかが判断基準になります。
途中で法人に移す場合
個人で買った物件を法人に移すことはできますが、コストがかかります。
- 譲渡所得税:個人から法人への売却として課税されます
- 不動産取得税:法人側で新たに発生
- 登録免許税:所有権移転登記に必要
- 金融機関の承諾:ローンが残っていれば必須。断られることもあります
合計すると数百万円規模になることもあります。だからこそ、最初の名義を慎重に決める価値があります。
判断の整理
個人が向いている場合
- 課税所得が900万円を下回っている
- 1〜2棟で止めるつもり
- 減価償却による給与所得との損益通算を使いたい
- 長期保有後の売却益を狙っている
- 法人の維持費と手間を避けたい
法人が向いている場合
- 課税所得が900万円を超えている
- 3棟以上に規模を広げたい
- 家族に役員報酬を出して所得を分散したい
- 相続対策として株式の形で承継したい
- 売買を繰り返す前提で運用したい
なお、ここに書いた税率や分岐点は一般的な目安です。実際の判断は、給与所得・家族構成・既存の資産状況によって変わります。金額が大きい判断ですので、税理士に一度相談されることをおすすめします。
まとめ
- 分岐点の目安は課税所得900万円前後。個人は最大約55%、法人は実効25〜35%程度
- 法人は経費の幅が広く、赤字の繰越が10年(個人は3年)
- 個人は給与所得との損益通算ができ、長期譲渡なら売却時約20%と低い
- 1棟目の融資は個人のほうが簡単。規模を広げるなら法人
- 法人の維持費は年間30〜60万円程度。これを上回る効果が出るかで判断
- 後から法人へ移すと譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税がかかる。最初に決める
コアラ不動産では、物件のご紹介とあわせて、名義をどうするかのご相談も承っています。必要に応じて税理士のご紹介も可能です。
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よくある質問
Q. 課税所得がいくらから法人が有利になりますか?
A. 一般に課税所得900万円前後が一つの分岐点とされます。個人の所得税・住民税は累進で最大約55%まで上がるのに対し、法人の実効税率はおおむね25〜35%程度で頭打ちになるためです。ただし社会保険料や設立・維持費を含めて判断する必要があります。
Q. 法人設立の費用はどのくらいですか?
A. 合同会社なら登録免許税6万円を含めて10万円程度、株式会社なら定款認証を含めて25万円程度が目安です。加えて、法人住民税の均等割が赤字でも年間7万円程度かかります。税理士に依頼する場合は顧問料も見込んでください。
Q. 1棟目から法人で買ってもいいですか?
A. 可能です。ただし設立直後の法人は実績がないため、融資では代表者個人の属性と保証が見られます。1棟目から法人にするかは、給与所得の水準と、今後何棟まで増やす予定かで判断してください。
Q. 個人で買った物件を後から法人に移せますか?
A. 移せますが、法人への売却という形になるため、譲渡所得税と不動産取得税、登録免許税が新たに発生します。ローンがある場合は金融機関の承諾も必要です。コストが大きいため、最初の名義の決定は慎重に行ってください。




