不動産投資で法人化(株式会社・合同会社の設立)を検討するタイミングはいつか。メリット・デメリットを含めて解説します。
法人化のメリット
- 税率の違い:個人の最高税率は55%、法人は実効税率約25〜35%。所得が大きくなると法人の方が税負担を下げられる
- 経費計上の幅が広がる:役員報酬・社会保険料・生命保険料などを経費にできる
- 損失の繰越期間:個人3年→法人10年
- 相続・事業承継対策:法人で株式として財産を移転しやすい
法人化のデメリット
- 設立費用(合同会社:6万円〜、株式会社:25万円〜)
- 毎年の維持コスト(法人住民税均等割:最低7万円/年)
- 会計・税務が複雑になり税理士報酬が増える
- 役員報酬は会社の経費だが受け取る側の給与所得になる
法人化を検討すべきタイミングの目安
- 不動産所得が年間500〜700万円を超えてきたとき
- 物件数が増えて管理が複雑になってきたとき
- 相続対策・事業承継を意識し始めたとき
岡山の不動産投資については岡山の収益物件投資ガイドをご覧ください。
岡山の法人にかかる税金の実際
法人化を判断するうえで、いちばん知りたいのが「結局いくら税金がかかるのか」です。ここを具体的に整理します。
法人にかかる税金の種類
- 法人税(国税):所得800万円以下の部分に軽減税率、それを超える部分は原則23.2%
- 地方法人税(国税):法人税額に対して課税
- 法人事業税(県税):所得に応じて課税
- 特別法人事業税(国税):事業税額に対して課税
- 法人住民税(県・市):法人税割と均等割
これらを合計したものが実質的な負担になります。
実効税率の目安
中小法人(資本金1億円以下)の場合、所得規模による実効税率のおおよその目安は次のとおりです。
- 所得400万円以下:おおむね25%前後
- 所得400〜800万円:おおむね27%前後
- 所得800万円超:おおむね33〜35%前後
重要なのは、所得が増えても税率が青天井には上がらないという点です。個人の所得税・住民税は累進課税で最大約55%まで上がるため、ここに差が生まれます。
赤字でもかかる税金がある
法人住民税の均等割は、赤字でも支払う必要があります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合、県民税と市町村民税を合わせて年間およそ7万円です。
この固定費があるため、収益が小さいうちに法人化すると負担だけが増えます。
法人化を検討する所得水準
一般に課税所得900万円前後が分岐点とされます。個人の所得税率が33%に上がる水準で、法人の実効税率とほぼ並ぶためです。
ただし税率だけでは決まらない
実際には次のコストを差し引いて判断します。
- 法人住民税の均等割:年7万円程度
- 税理士報酬:年20〜50万円程度(法人決算は個人の確定申告より複雑です)
- 設立費用:合同会社で10万円程度、株式会社で25万円程度
- 社会保険料:役員報酬を出す場合、会社負担分が発生します
年間30〜60万円程度の固定費が増えると見込んでください。この額を上回る節税効果が出るかが判断の基準です。
物件数で言えば
目安として、3棟目以降を視野に入れる段階が一つの区切りになります。個人では年収に対する借入総額に上限があり、2棟目・3棟目で頭打ちになるためです。法人であれば決算書の内容次第で融資枠を伸ばせる可能性があります。
法人化のもう一つの効果
家族への所得分散
配偶者や親族を役員にして役員報酬を出すことで、所得を分散できます。1人で1,000万円受け取るより、2人で500万円ずつのほうが累進課税の負担は軽くなります。
ただし実態のない報酬は認められません。実際に業務に関与していることが前提です。
赤字の繰越期間が長い
- 個人:青色申告で3年
- 法人:10年
大規模修繕などで大きな赤字が出た年の損失を、長く使えるのは法人です。
相続対策として
不動産そのものではなく、法人の株式(持分)の形で承継できます。株式は分割しやすいため、複数の相続人がいる場合に共有名義のトラブルを避けやすくなります。
法人化の手続きと流れ
設立自体は難しくありません。おおまかな流れは次のとおりです。
- 基本事項を決める(商号・本店所在地・事業目的・資本金・役員)
- 定款を作成する(株式会社は公証役場での認証が必要。合同会社は不要)
- 資本金を払い込む
- 法務局に設立登記を申請する(申請日が設立日になります)
- 税務署・県税事務所・市役所へ届出
- 法人口座を開設する
不動産保有を目的とする資産管理法人では、費用が安く手続きも簡単な合同会社を選ぶ方が多くいます。
事業目的に入れておくもの
定款の事業目的に「不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介」といった記載を入れておきます。後から変更すると登記費用がかかるため、将来やる可能性のある事業も含めて記載しておくのが実務的です。
注意しておきたいこと
個人で買った物件を後から法人に移すとコストが大きい
法人への売却という形になるため、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税が新たに発生します。ローンが残っていれば金融機関の承諾も必要で、断られることもあります。
合計すると数百万円規模になることもあるため、最初にどちらで買うかを決めておく価値があります。
設立直後の法人は融資で不利になりやすい
決算実績がないため、金融機関は代表者個人の属性を見て判断し、連帯保証を求めます。1棟目から法人にする場合は、この点を理解しておいてください。
判断は税理士に相談を
ここに書いた税率や分岐点は一般的な目安です。実際の判断は、給与所得・家族構成・既存の資産状況によって変わります。金額の大きい判断ですので、一度は専門家に相談されることをおすすめします。
購入時の名義をどうするか
法人と個人、どちらで買うべきかの判断基準を、税率・融資・コストの面から整理しています。
岡山の収益物件は法人と個人どちらで買うべきか
融資の準備を進めたい方へ
岡山で使える金融機関、審査で見られる点、金利の目安をまとめています。
岡山の不動産投資ローン完全ガイド
よくある質問
Q. 法人化は最初からすべきですか?
A. 収入が少ない段階では維持コストの方が大きくなるため、まず個人で始めて所得が増えてきたら法人化を検討するのが一般的です。
Q. 既に個人で持っている物件を法人に移すと税金はかかりますか?
A. 個人→法人への物件移転は売買として扱われ、譲渡所得税がかかります。法人化は新規購入から適用するケースが多いです。




