収益物件を持つオーナーが見落としがちなのが修繕費の積立です。「今は問題ないから」と積み立てをしていないと、大規模修繕が必要になったとき資金が足りなくなります。今回は修繕費の目安と積立の考え方をご紹介します。
なぜ修繕費の積立が必要か
建物は時間とともに必ず劣化します。外壁・屋根・給排水設備・室内設備など、定期的な修繕が必要です。これを見越して毎月積み立てておかないと、修繕費が発生したときにキャッシュフローが急激に悪化します。
修繕費の目安一覧
定期的にかかる修繕
- 外壁・屋根塗装:100〜300万円(10〜15年ごと)
- 給排水管の洗浄・修繕:10〜50万円(5〜10年ごと)
- 共用部の照明・設備交換:数万〜数十万円(随時)
退去ごとにかかる修繕
- 室内クロス・床の張り替え:20〜50万円
- エアコン交換:5〜15万円
- 給湯器交換:10〜20万円
- クリーニング:3〜8万円
突発的な修繕
- 水漏れ・配管破損:10〜100万円以上
- 雨漏り修繕:10〜100万円
- 設備の突然の故障:数万〜数十万円
月々いくら積み立てるべきか
一般的な目安として、月額家賃の5〜10%を修繕費として積み立てることをお勧めします。
例:月家賃5万円の物件なら月2,500〜5,000円を積立。年間3〜6万円。これを複数年続けることで、大規模修繕に備えられます。
築年数が古い物件ほど修繕リスクが高いため、積立率を高めに設定することをお勧めします。
修繕履歴の確認も重要
物件を購入する際は、過去の修繕履歴を必ず確認してください。長期間大規模修繕が行われていない物件は、購入後に多額の修繕費がかかるリスクがあります。修繕履歴が確認できない物件は要注意です。
修繕の規模別|小規模・中規模・大規模の違い
修繕費を計画的に積み立てるには、まず「どの規模の修繕がいつ来るのか」を把握しておく必要があります。修繕は大きく3つの規模に分けて考えると整理しやすくなります。
小規模修繕(数万円〜数十万円)
日常的に発生する補修や、入居者の退去にともなう原状回復が中心です。
- クロスの部分張り替え、畳の表替え
- 網戸・建具・鍵の交換
- 共用部の照明交換、簡易清掃
- エアコン・給湯器など単体設備の修理
発生頻度が最も高く、毎年必ず何かしら発生します。年間で家賃収入の3〜5%程度は小規模修繕に消えると考えておくと、想定外の出費に驚かずに済みます。
中規模修繕(数十万円〜100万円台)
5〜10年程度の周期で発生する、設備単位の更新です。
- 給湯器・エアコンのまとまった交換(複数戸分)
- 給排水管の高圧洗浄、部分交換
- 室内フルリフォーム(1戸あたり50〜100万円)
- 共用部の階段・廊下の補修、鉄部塗装
小規模修繕と違い、まとまった金額が一度に出ていくため、積立がないと資金繰りが厳しくなります。特に築15年を過ぎたあたりから発生しやすくなります。
大規模修繕(100万円〜300万円以上)
10〜15年周期で訪れる、建物全体の維持に関わる工事です。
- 外壁塗装・屋根の葺き替え(100〜300万円)
- 防水工事(屋上・ベランダ)
- 給排水管の全面更新
金額が大きいため、最低でも10年かけて計画的に積み立てておく必要があります。大規模修繕の資金が用意できず、劣化を放置した結果、入居率が下がって売却価格も落ちるというのが、収益物件で最もよくある失敗パターンです。
岡山の物件規模別・積立額の目安
「家賃の5〜10%」と言われてもピンとこない方向けに、岡山でよくある物件規模で具体的に計算してみます。
木造アパート6戸(家賃5万円)の場合
- 月間家賃収入:30万円
- 積立の目安(5〜10%):月1.5万〜3万円
- 年間:18万〜36万円
- 10年で:180万〜360万円
10年で外壁塗装(100〜300万円)に十分対応できる水準です。
木造アパート4戸(家賃4.5万円)の場合
- 月間家賃収入:18万円
- 積立の目安:月9,000〜1.8万円
- 10年で:108万〜216万円
戸数が少ない物件ほど、1戸あたりの修繕負担が重くなります。小規模物件では積立率を高め(8〜10%)に設定しておくと安心です。
築年数による調整
- 築10年未満:5%程度でも対応可能
- 築10〜20年:7〜8%を目安に
- 築20年以上:10%以上。設備の一斉更新時期が重なりやすい
積立金の管理方法
積立は「意識して分けておく」ことが大切です。家賃収入の口座に入れたままだと、生活費や他の支払いに使ってしまいがちです。
- 専用口座を分ける:物件ごと、または修繕費専用の口座を作る
- 自動積立にする:毎月定額を自動振替に設定し、判断を挟まない
- 年1回は残高と修繕計画を照合する:次の大規模修繕までに必要な額に届いているか確認する
なお、積立をしている段階では経費になりません。実際に修繕を行った年に、その内容に応じて修繕費(経費)または資本的支出(減価償却)として処理します。この点は確定申告で間違えやすいので注意してください。
まとめ
- 修繕費は月額家賃の5〜10%を積み立てる
- 外壁・屋根は10〜15年ごとに100〜300万円かかる
- 退去ごとに室内リフォームで20〜80万円を想定する
- 築年数が古いほど積立率を高める
- 物件購入時に修繕履歴を必ず確認する
修繕費を含めた収支シミュレーションについては、コアラ不動産にご相談ください。
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よくある質問
Q. 修繕積立は必ずやらないといけませんか?
A. 法律上の義務はありませんが、実質的に必須です。大規模修繕は10〜15年周期で100万円以上かかるため、積立がないとその時点で資金繰りが行き詰まります。修繕を先送りすると入居率と売却価格の両方が下がります。
Q. 築何年くらいから修繕費が増えますか?
A. 築15年を過ぎたあたりから、給湯器やエアコンなど設備の更新が重なり始めます。築20年以降は外壁・屋根・給排水管といった大規模修繕の時期にも入るため、積立率を家賃の10%以上に高めておくことをおすすめします。
Q. 積み立てたお金は経費にできますか?
A. 積み立てている段階では経費になりません。実際に修繕を行った年に、内容に応じて修繕費(経費)または資本的支出(減価償却)として処理します。判断に迷う場合は税理士に確認しましょう。
Q. 中古物件を買うとき、修繕履歴はどこで確認できますか?
A. 売主または管理会社から修繕履歴の資料を取り寄せます。資料が残っていない物件は、直近で大規模修繕が行われていない可能性が高いため、購入後すぐに費用が発生するリスクを見込んでおく必要があります。
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齊藤 圭(さいとう けい)
コアラ不動産合同会社 代表|宅地建物取引士・FP3級
岡山県で収益物件・投資用不動産の売買・管理を専門に行う。地域の賃貸需要・融資事情・エリア特性を踏まえた提案を大切にしており、初めての方から投資経験者まで幅広く対応。「何から始めればいいかわからない」という方からのご相談が最も多いです。
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