収益物件の資料を見ると、「表面利回り12%」といった数字が大きく書かれています。しかしこの数字は、レントロールの内容次第で意味が変わります。
この記事では、レントロール(各部屋の賃貸条件一覧)から何を読み取るべきかを、実務の視点で整理します。
レントロールに載っている項目
書式は会社によって違いますが、通常は次の項目が並びます。
- 部屋番号・間取り・面積
- 賃料・共益費(管理費)
- 駐車場代
- 敷金・保証金
- 契約開始日・契約期間・更新日
- 入居者の属性(個人/法人、学生/社会人など)
- 入居中/空室の別
表面利回りは、ここに載っている賃料の合計から計算されます。つまりレントロールが実態と違えば、利回りも実態と違うということです。
①同じ間取りの家賃差を見る
最初に見るべきはここです。
差が大きい場合に何が起きているか
たとえば同じ1Kが6室あり、家賃が5.5万円から4.2万円までばらついているとします。多くの場合、高いほうが古い契約、安いほうが新しい契約です。
これは、募集のたびに家賃を下げないと決まらない状態を意味します。今の実力は「安いほうの家賃」です。
実力ベースで利回りを計算し直す
すべての部屋が新しい契約の家賃水準に置き換わったと仮定して、利回りを計算し直してみてください。上の例なら全室4.2万円で計算します。
この数字が、数年後の実力に近い利回りです。表面利回りとの差が大きい物件は、買った後に収支が悪化していきます。
階数や向きによる差は正常
1階と最上階、角部屋と中住戸で数千円の差が付くのは自然です。問題になるのは、条件がほぼ同じ部屋の間に大きな差がある場合です。
②契約開始日の偏りを見る
次に、契約がいつ始まったかを並べてみます。
直近に集中していたら理由を聞く
売り出しの直前、数か月の間に複数の契約が始まっている場合、売却のために急いで埋めた可能性があります。
家賃を大きく下げた、フリーレント(一定期間家賃無料)を付けた、広告料を上乗せしたといった手段で埋めていることがあり、その場合は次の更新で退去する可能性が高くなります。
不動産会社に「直近の契約でフリーレントや家賃の減額はありましたか」と確認してください。
長期入居が多いのは良い兆候だが注意点も
10年以上住んでいる入居者が多いのは、住み心地が良く管理も行き届いているサインです。ただし、その家賃は今の相場より高い可能性があります。退去したら同じ家賃では決まりません。
長期入居者の家賃が周辺相場より2割高いなら、その差額分は将来失われる収入と考えておいてください。
③入居者属性の偏りを見る
誰が住んでいるかも重要な情報です。
特定の企業・学校への依存
入居者の多くが同じ企業の社宅、あるいは同じ学校の学生という物件があります。稼働は安定しますが、その企業が撤退したり、学校が移転したりすると一気に空室になります。
岡山でも、工場の近くで従業員需要に支えられている物件、大学の近くで学生需要に支えられている物件があります。安定性と集中リスクは表裏一体です。
法人契約の割合
法人契約は家賃の支払いが安定する一方、転勤のタイミングでまとめて退去することがあります。契約期間と更新時期を確認してください。
生活保護・高齢の単身者
これ自体が悪いということではありません。ただし、家賃の支払い方法(代理納付か本人納付か)や、緊急連絡先が機能しているかを確認しておくと、後の対応がスムーズになります。
④敷金と預り金を確認する
見落とされやすいのがここです。
敷金は買主が引き継ぐ
入居者から預かっている敷金は、物件を買うと買主が返還義務を引き継ぎます。決済時に売主から買主へ引き継がれるのが一般的ですが、金額と精算方法を必ず確認してください。
レントロール上の敷金合計が数百万円になることもあります。これが引き継がれないまま決済すると、退去時に自己負担で返すことになります。
更新料の扱い
更新料が収入に含められて利回りが計算されていることがあります。更新料は毎年発生するものではないため、年間収入に含めるべきかは慎重に見てください。
⑤空室の履歴を聞く
レントロールには「今の状態」しか載りません。過去の情報は質問して引き出します。
- この1年で何室退去があったか
- 空室期間はそれぞれどのくらいだったか
- 今の空室はいつから空いているか
- その部屋の募集家賃はいくらか
「今空いている部屋が、いつから空いているか」は特に重要です。半年以上空いているなら、何か決まらない理由があります。
読み方の手順まとめ
- 同じ間取りの家賃差を確認 → 安いほうの家賃で利回りを計算し直す
- 契約開始日を並べる → 直近に集中していれば理由を確認
- 入居者属性を確認 → 特定の企業・学校への依存度を見る
- 敷金の合計と引き継ぎ方法を確認
- 過去1年の退去数・空室期間を質問
- 周辺の賃貸相場と照合 → 現在の家賃が相場より高くないか
この6ステップを踏むと、資料に書かれた表面利回りと、実際に手に入る収入の差が見えてきます。
まとめ
- 表面利回りはレントロール次第で意味が変わる。数字そのままを信じない
- 同じ間取りの家賃差が大きい物件は、安いほうが今の実力
- 契約日が直近に集中していたら、売却のために急いで埋めた可能性を疑う
- 長期入居者の家賃は相場より高いことがあり、退去後に下がる
- 特定の企業・学校への依存は、安定と集中リスクの両面がある
- 敷金は買主が返還義務を引き継ぐ。金額と精算方法を必ず確認
- 今の空室が「いつから空いているか」を質問する
コアラ不動産では、物件をご紹介する際にレントロールの見方も一緒にご説明しています。数字の裏に何があるかを確認したうえで判断していただければと思います。
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よくある質問
Q. レントロールとは何ですか?
A. 収益物件の各部屋について、家賃・共益費・敷金・契約日・契約期間・入居者の属性などをまとめた一覧表です。物件の収益力を判断する最も重要な資料で、購入検討時に不動産会社から提供されます。
Q. レントロールのどこを最初に見るべきですか?
A. 同じ間取りの部屋の家賃差です。差が大きい場合、直近の募集で家賃を下げている可能性があります。新しい契約の家賃が、その物件の現在の実力です。
Q. 満室のレントロールなら安心ですか?
A. 必ずしもそうではありません。売却前に家賃を下げて急いで埋めた場合や、短期契約で一時的に埋めている場合があります。契約日が直近数か月に集中していたら、理由を確認してください。
Q. レントロールがもらえない物件はどう考えればいいですか?
A. 慎重に判断すべきです。収益物件でレントロールが出てこないのは通常ではありません。売主が実態を知られたくない、あるいは管理が行き届いていない可能性があります。開示を求めたうえで、応じないなら見送ることも選択肢です。




